【導入事例】ニッセイ情報テクノロジー株式会社共済保険ソリューション事業部(10 Days SaaSification for AWS)
保険や共済を中心とした様々なITソリューションの提供を行うニッセイ情報テクノロジー株式会社。10 Days SaaSification for AWSを通じて、従来製品のクラウド化に取り組みました。
インタビューにご協力いただいたのは、同社共済保険ソリューション事業部の堀内さんと須田さんです。
SIからSaaSという未知の領域へ
-まず初めに貴社の事業内容やプロダクトについて教えてください。
堀内さん:
弊社の事業内容としては保険・共済、年金、ヘルスケア領域を中心とするシステムの提供をメインに行なっています。私が所属している共済保険ソリューション事業部では共済団体様に対して、共済業務をサポートするためのシステムの開発やサービスの提供を行なっています。私は共済団体様の福利厚生、共済契約管理業務をサポートする製品である『Tomte』(トムテ)の開発に携わっております。現在は従来オンプレまたは自社のプライベートクラウド環境を基本として提供してきた『Tomte(*1)』の次期バージョンの検討を主導しています。
(*1) 共済向け 福利厚生支援システム『Tomte』(トムテ)
「Tomte/福利厚生支援」は、福利厚生事業を運営する共済団体向けに、本部および会員企業(団体)の事務をペーパーレスで実現するシステムをクラウド形式で提供するサービス。
須田さん:
当事業部で構築している共済団体様のシステムの運用管理及びインフラの開発を担当しています。また、全社でのクラウド推進を行うCCoE室の窓口も兼務しています。
弊社は日本生命グループ内だけでなく、グループ外のお客様向けのシステム開発も行なっており、グループ内外ともにクラウドでの開発の裾野を広げる意味でも各事業部に対してクラウドの理解と利用の浸透を推進する役割を担っています。
-次期『Tomte』に関しては最初からSaaSとして開発する想定でしたか?
堀内さん:
既存のASPの形からクラウドで管理する領域を広げていくという程度の想定だったので、SaaS化ということは意識していませんでした。従来の製品を元に、より多くのお客様にご利用いただくために、どうしていくべきか?というところの検討から始まったので、今回、10 Daysの提案をいただいて初めて、SaaSという選択肢が見えた気がしています。
当初、SaaSに関する知識が少なく、オンプレをベースとした従来の方式でも十分な認識でしたが、10 Daysの説明を聞いているうちにSaaS化していくべきだという考えが強まりました。
須田さん:
私自身はASPに関しては20年以上前から知ってはいましたが、漠然と大規模なシステムのイメージがありました。10 Daysを通じてSaaSへの理解が深まると、SaaSではクラウドを活用したリソースの有効活用によって、スモールスタートで進めることができることに気付き、想定していたよりも敷居が低いように感じました。
10 DaysはSaaSのビジネス的な観点、クラウドアーキテクチャ、テナントモデルに関する理解や知見を深めるきっかけになったと思います。
-社内でSaaSやクラウドの有識者などはいたのでしょうか?
堀内さん:
他の事業部ではAWSを使っているところもありますが、私達の事業部ではAWSをはじめとするパブリッククラウドサービスを活用した製品が無いので、SaaSやクラウドについて深く理解している人はいませんでした。会社としては、社員のクラウド技術者を増やしていくための取り組みを積極的に行っているのですが、当事業部としては、現状、パブリッククラウドを利用した具体的なシステム開発、サービスがほとんどないことから、実業務としてクラウドに取り組む機会が乏しいのが実情でした。
私達の事業部はSI開発が主体で、なかなかクラウドに接する機会がありませんでしたが、SaaS化を見据えた時に、実際に使っていくために考えるべきことがたくさんあり、これまで少し遠い世界の話のように感じていたクラウドが身近に感じて、自分ごととしてクラウドと向き合えている実感があります。これから事業部内でクラウドを先導していく立場になるのでとてもワクワクしています。
須田さん:
私も、特にSaaSやクラウドへの関心や意識が強くなっています。また、SaaS化を突き詰めて考えていくと、共済保険SaaSの需要の秘められたポテンシャルを感じていて、事業部の柱にしていく上でもSaaSという在り方に可能性を感じています。SaaS未開拓の業界や業種に展開することで、SaaSそのものを活性化させられるという点で、社会的な意義も感じています。
-AWSについてどのようなイメージを持たれていましたか?
堀内さん:
AWSに初めて触れたのは、3年ほど前の社内の研修でした。受講予定だった人が参加できなくなり代打で受講した形だったので、そこで得る知識やスキルを業務で利用するイメージが持てず、その当時担当している業務での必要性を感じられませんでした。AWSについて学ぶことに対しての積極的な動機はありませんでしたね。
事業の特性上、個人情報を多く取り扱うので、当時はお客様としてもパブリッククラウドへの抵抗感があったように感じます。近年では世の中的にパブリッククラウド利用の機運が高まって、それに伴って抵抗感も薄れているように感じます。
これまではパブリッククラウドの利用に対する無意識の抵抗感や不安があったのかもしれません。ただ、現在においては、クラウドのメリットを生かして価値提供していく可能性を模索し、それを実現していくことができなければ、淘汰されるリスクが高まっています。クラウドを積極的に利用していくことが重要になってきているように感じ、私達も向き合う時が到来したのだと考えています。
須田さん:
AWSはやはり汎用性が高いなと感じています。また、 AWS Black BeltやAWS Skill BuilderなどクラウドやAWSのサービスに関する教材が充実していて学びやすく、疑問を解決するための手段が豊富で、知識がないところからでも学習を進められる点は魅力的でした。
パブリッククラウドへの挑戦
-10 Days実施を決断した経緯についてお聞かせください
堀内さん:
従来のプロダクトは自社のプライベートクラウドを使用しているので、AWSなどのパブリッククラウドに比べてコストが高く、それによってお客様の費用もかさんでしまうという課題がありました。パブリッククラウドに乗り換えることで、安く済むのではないかという漠然とした想定はありましたが、実際にどの程度インパクトがあるのか分からなかったり、移行するための手段についても、不鮮明で二の足を踏んでいたところに、須田さんから10 Daysの紹介を受けて、すぐにでも始めたいと考えていました。知識や経験が不足していて、何から手をつけるべきかも分からない中で、10 DaysをきっかけとしてSaaS化に取り組んだことで道筋が見えてきたように感じます。
須田さん:
私はAWSさんからのご紹介で10 Daysを知りました。当時、CCoE室の担当として堀内さんと打ち合わせをしている時に、どこから手をつけるべきかと困っていたことを知っていたので、資料を見て、これだと思い堀内さんに提案しました。その時点ではSaaS化の想定はありませんでしたが、国内のSaaSがまだまだ未発展だということや、社内でのSaaSの利用が進んできている背景から、SaaSの将来性に可能性を感じ、その足がかりとして10 Daysは適していると思いました。
-10 Days推進時の様子についてお聞かせください。
堀内さん:
SaaSの立ち上げを体験するという、貴重な機会ということもあり多くのメンバーが参加しました。開発を委託している協力会社のメンバーにもAWSについて知見を得て欲しいと思ったので、声をかけたら積極的に参加してくれました。新しい経験や知識を身につける機会ということで、開発メンバーのモチベーションのアップにも繋がったと感じています。
須田さん:
私自身もクラウド案件は未経験だったので、従来の開発に慣れて凝り固まっている知見をほぐす機会になりました。正直なところ、SaaSというものが未知数だったので、10日間でSaaS?という不安もありましたが、AWSとSaaSus Platformを活用して、実際に動くものを見せてもらうと、これらを活用すれば早く仕上がるというイメージが沸いてきました。そのスピード感を体感したおかげで、よりクラウドファーストへの意識が高まったように感じます。
クラウド推進の立場になったので、AWSの認定資格を取得しましたが、それだけでは十分でなく実践の必要性を感じました。貴社のソリューションアーキテクト(SA)の方が実際に作ったものを見て、感動しました。実際の成果物を見せてもらったり、それを真似るというのはとても勉強になりますね。
-10 Daysのコンテンツで印象的だったものはありますか?
堀内さん:
AWSのサービスを使ってシステムをいかにして構築するか?というところが全くピンときていなかったので、貴社SAの方が実際に作ってくれたお手本を見せてもらえたことですかね。それらを通じて、私達も実際に動くものを作れるところまでいけたので、サービスの組み合わせ方や開発の進め方、考え方の理解が深まりました。作ろうとしているサービスの要件や課題をヒアリングしていただき、それを踏まえたサービス選定もお手伝いいただけてありがたかったです。
10 Daysは合計80時間の確保が必要だったので、その時間を捻出するのは大変でしたが、10日間短期集中ではなく、空き時間を柔軟に活用しながら進めることができてよかったです。個人的な体感としては毎週1日ずつ進めるのがちょうど良いかなと思いました。
須田さん:
設計図を見せてもらうと、サービスの部分だけでなく、監視やデプロイの仕組みなどの部分も考慮されていて、短期間で素早くリリースし、継続的なデリバリーを実現することについて考えられていました。クラウドを利用することで、人に依存せずに運用ができることをデモンストレーションを通じて視覚的に理解できました。実際に動くものを見るのと、概念だけ理解するのとはだいぶ違うなと感じました。SIの業務に慣れていたので、とても新鮮でしたね。
SaaS開発を体感することで視界がクリアに
-10 Daysを実施してみて、感じる効果などはありますか?
堀内さん:
今後の方向性や課題、それを実現する具体的な方法などがクリアになりました。
AWSに移行する時はIaaS的なイメージで単なるコスト削減の手段という認識でしたが、10 Daysで学んだことを踏まえるとそれはクラウドのメリットのほんの一部分でしかないと気付きました。クラウドのメリットを生かすために、より積極的にクラウドサービスを利用していくべきという考えに変わっていきつつあります。それにより、アプリケーションの部分に集中していくことが重要だと感じています。
クラウド上でサービスを作ることで、他のサービスと連携を見据えた開発に変わっていくと思うので、自社内で完結するSI開発の考え方からは変えていく必要があると気付きました。
また、従来の製品では顧客ごとのカスタマイズを前提としていましたが、SaaSでは統一のサービスを画一的に提供していくことが主流になるので、顧客ターゲットや幅広いニーズを満たすためのプロダクトの方向性や在り方について考えていく必要があるなと強く感じました。プロダクトマネジャーを立てて、この辺りの思考に力を入れていくべきだと考えており、体制の変更も視野に入れています。
須田さん:
最近ではプロダクトマネジメントに関する情報がたくさんあり、世間の潮流としてその重要性が高まっているように感じます。SI的な開発ではなく、自分たちでニーズを見極め、それに対応したサービスを提供していく必要があります。私達はSI主体として活動してきた組織なので、10 Daysで得たSaaS化やクラウド化についての知見や認識を事業部に還元して理解を深めていけたらと考えています。
堀内さん:
10 Daysに参加したメンバー内では意識改革が起こっており、これを事業部全体に広げていきたいと考えています。次期『Tomte』を成功させることで、説得力を持って訴えていけるようになると思うので、プロダクトを成功させてより広い範囲での組織や個人のマインドチェンジに繋げていきたいですね。私達の活動によって、変わるきっかけを与えていけたらと思います。
須田さん:
実際に、参加したメンバーの間ではAWSの知識への意識向上を感じます。資格取得に動き出しているメンバーもいますね。
私自身も、資格を取得しましたが、積極的に情報収集するというところまではできていませんでした。10 Daysをきっかけに、 AWS Black BeltやAWS Skill Builderを見て、能動的にSaaSのアーキテクチャやビジネスに関する知見を得るようになりました。SaaSの理解度が上がったことで、視野が広がり、日常的なキャッチアップへの意識が変わったように感じます。
-では、実際に触れてみてAWSのメリットは何だと感じましたか?
堀内さん:
これまでの開発との違いで感じるのは、インフラ周りの煩雑さがなくなるので、すぐに開発に移れるという点ですね。AWSを利用することで、より早く安くお客様に提供できる様になります。また、開発に着手するハードルが下がったことで、実験的な試みもしやすくなり失敗した時のリスクを抑えられるのは大きなメリットだと感じています。
須田さん:
試行錯誤ができることで提供できる価値の向上とスピードアップにも繋がりますね。ハードウェアなど物理的な物を購入するとなると、それらを無駄なく活用できる見込みがないとそもそも動き出せなかったりもします。コスト面での無駄がなくなることで、費用対効果の検証にシビアにならなくてもよくなるので、それによって意思決定のスピードも上がるという効果もありますよね。
-SaaSus Platformのメリットは何だと思いますか?
堀内さん:
私達としては共済のためのシステムに集中したいので、いわゆるコントロールプレーンのようなSaaS共通部分に手間をかけたくないというのが本音です。そもそもSaaS共通部分に関しても、どういった検討が必要なのかなど勘所がないので、それらを自前で用意するとなるとかなりのリソースが必要になると思います。そういった部分をSaaSus Platformを使うことで、手離れできるのはありがたいですね。
須田さん:
AWSにも当然、認証サービスはありますが、使える形にするには手間がかかります。それを使える状態にして提供できるのはSaaSの知見や技術によるところだと思います。
個人的にはSaaS for SaaS(SaaS Control Plane as a Service)というコンセプトも素晴らしいなと感じています。
サービスを成功させて事業をリードする
-事業の今後について教えてください
堀内さん:
直近では、次期『Tomte』を具体的に製品化していくために活動します。事業部としても『Tomte』だけでなく、他の製品もクラウド上で提供できるように、組織全体がSaaSやクラウドの知見を高められるようにスキルアップしていきたいと考えています。それによってお客様にさらなる価値を提供していきたいですね。
『Tomte』をまずは成功させるというのが現時点での目標ですが、それにとどまらず、経験を他のサービスに生かすというところまで念頭に置きながら進めていきたいです。
須田さん:
私はインフラ周りの仕事に携わってきたので、今後、それらの発展を見据えて知識の研鑽を行っていきたいですね。ビジネスサイドでは『Tomte』以外の隠れた需要を掘り起こせるように、アンテナを張っていきたいです。今以上にSaaSやクラウドの知見を身につけることでアイデアにも繋がると考えているので、積極的にキャッチアップしていきたいです。
-最後に10 Days推進検討者に一言をお願いします
堀内さん:
貴社SAの方を含め、SaaS化への多大な支援に感謝しています。とても素晴らしい取り組みなので、興味があればぜひチャレンジして欲しいです。SaaSをまだまだ知らない人が最初に取り組むには最適なプログラムです。
須田さん:
教科書的なSaaS開発として、これからSaaSに取り組むために必要な知識や考え方を一通り学ぶことができます。挑戦を迷っているのなら、チャレンジして損はないと思います。
-ありがとうございました!
Spread the word: