SaaS開発ガイド【基礎編】

SaaSにおけるソフトウェア開発では、大きく「立ち上げ期」「運用期」「成長期」の成長ステージに分かれます。ここでは、成長ステージ毎の概要や考慮すべきポイントを解説します。
まずは、立ち上げ期で考慮すべきポイントについて、顧客を獲得する前後に分けて述べていきます。
顧客を獲得する前の最初の段階では、将来的なSaaS開発を成功させるための事前準備が重要です。具体的には、潜在顧客のニーズ調査、ビジネスプランの立案、プロトタイプの準備などが挙げられます。
ここでポイントとなるのはユーザーインタビューを通して初期ターゲットのニーズを把握して、できるだけ早くプロダクトを市場に投入することです。潜在顧客のニーズ調査やビジネスプランの立案も重要である一方で、実際に顧客にSaaSプロダクトを提供して市場の反応を直接検証できるとより効果的です。そのため、まずは簡易なアーキテクチャ設計で素早くプロトタイプを準備するとよいでしょう。市場投入時には、提供するSaaSが持つ強みを全面に出します。最低限必要な機能に絞りつつも、強みは削らないようにすることが重要です。
プロトタイプを市場に投入した後は、実際にサービスを利用する顧客があらわれます。この段階ではまだ顧客数が少なく、市場ニーズが捉えきれていない状況のため、まずは少しでも多くの顧客に使ってもらうことが大切です。顧客に利用してもらう際には、ユーザー体験(UX)に関する調査も重要です。ユーザー体験を反映させた製品の開発や検証を繰り返すことで、顧客の感情も理解することができます。獲得した顧客が当初のペルソナと合致しているか、ユーザー継続率はどの程度かなど、顧客から得られる実際の情報を確認しましょう。
運用期では、立ち上げ期に比べて顧客数が増加していきます。ここで考慮すべきポイントは、顧客数の増加につれて運用コストが増大しないようにすることです。
顧客数に比例して運用コストが増えると、SaaSの特徴の1つであるスケールメリットによるコスト効率性の実現が難しくなってしまいます。
運用コストの効率化を図るためには、顧客数の増加に伴う対応をソフトウェア内で自動化させることが重要です。例えば、ソフトウェア内で新規顧客が自ら会員登録やログインをできるようにする、顧客が増えてもインフラが自動的に拡張されると運用コストも線形に増えないように、拡張性を意識したソフトウェア開発がポイントとなります。
運用期を乗り越えると、大幅に顧客数が増加する成長期に入ります。この段階では、多くの企業や顧客を抱えることになるでしょう。収益は拡大していく一方で、顧客が多い分、各顧客と直接的な接点を持つことが難しくなっていきます。
ここで考慮すべきポイントは、顧客データに基づくプロダクトマネジメントや継続的なアップグレード・改善活動を続けていくことです。従来のパッケージ型ソフトウェアでは顧客に売るまでが勝負であったのに対し、SaaSでは顧客と接点を持った後からが勝負といえます。顧客データを収集・分析し、さらなる機能改善につなげていく継続的な取り組みが不可欠です。なお、顧客の数が多い場合は、すべての顧客の声を反映することは現実的に難しいため、要望が与えるビジネスインパクトに従って優先順位づけをする必要があるでしょう。
競合に打ち勝ち、SaaSが提供する領域のベストプラクティスであり続けるためには、成長期に入った後こそ開発すべき機能を顧客データを元に検討をしていくことが不可欠です。
SaaSはいくつかのステージで分けられ、そのステージに応じて対処すべき問題や考慮すべきポイントが異なります。また、SaaSを運営するにつれて見えてくる課題やそのSaaSの強みなどもあります。ステージごとに変化していくポイントに対して柔軟に対応していくことが肝要です。
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