SaaS開発ガイド【基礎編】

この記事では、SaaSビジネスでよく使われるKPIをまとめて解説します。
SaaSは従来の買い切り型のソフトウェアと異なり、継続利用を前提としたサブスクリプションモデルを採用することが多いです。そのため、買い切り型とは異なるKPIが必要です。
また、サービス内容によっても必要なKPIは異なります。例えば、オプションの収益が多いのであれば、サブスクリプションの定額料金だけでなく、オプション費用も加味したKPIを立てる必要があり、定額料金が低価格であれば、収益の解約率がより重要なKPIとなるでしょう。KPIの目的を理解し、自社に必要なKPIを設定してください。
E-Book「SaaS開発ガイド」にてSaaS開発に取り組む前に知っておきたい重要ポイントを解説しています。
SaaSに関する基礎的な知識を身に付けたい方はぜひご一読ください。
また、ブログやE-bookで扱って欲しいSaaSに関するトピックやSaaSus Platformについてもっと知りたいことなどへのリクエストを広く募集しています。コンテンツに関する要望や感想がございましたら、こちらからぜひお寄せください。
収益性に関係するKPIをまとめました。収益性を把握することでビジネスの持続可能性を評価することが可能になります。収益性に関する数値は資金調達の際にも重要視されるので、しっかりと数値管理をすることがSaaSビジネスを推進する上で肝要になります。
マーケティングや営業など顧客獲得にかかったコストを指します。コストパフォーマンスの悪いチャネルを見つけ、マーケティング施策の最適化に役立ちます。「顧客獲得コスト/ 新規獲得顧客数」で計算します。
CAC(顧客獲得コスト)を回収するまでにかかった期間。「CAC/顧客の平均単価」で計算します。目安は6ヶ月から12ヶ月以内と言われており、短いほど費用対効果が良いと言えます。ユニットエコノミクスとセットで判断する必要があります。
顧客生涯価値。特定の顧客がSaaSビジネスにどれだけの価値をもたらすかを評価する指標。長く利用してもらいたいSaaSビジネスにおいて、LTVは重要な指標となります。サブスクリプションモデルの場合、解約率が収益へ影響しやすいため「顧客の平均単価×粗利÷解約率」で求めることが一般的です。
CAC(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)より求める顧客1人あたりの収益率。「LTV/CAC」で計算します。さらに資本を投下してユーザ数を増やす(CACを上げる)べきか、LTVを上げる方向性の施策を打つべきかなど、事業投資の効率性や健全性を測るために使用されます。
月間で課金されたサブスクリプション料金の合計、月間定期収益。
年間で課金されたサブスクリプション料金の合計、年間経常収益。
1つのアカウントあたりの平均収益。「MRR(or ARR)/全アカウント数」で計算します。同一ユーザーがPCとスマホの2つの端末でログインしても、同一アカウントとなるためカウントは1となります。複数端末で利用される場合、ARPUよりもARPAの方が実態を反映することができます。
ユーザー1人あたりの平均収益。「MRR(or ARR)/全ユーザー数」で計算します。同一ユーザーがPCとスマホの2つの端末でログインしても、別ユーザーとなるためカウントは2となります。
一定期間内の1人あたりの新規顧客から得られる平均収益。「一定期間内のMRR/その期間内新規獲得顧客数」で計算します。
ビジネスの成長の健全性を示す指標。「増加分のMRR/損失分のMRR」で計算します。目安は、SaaSクイックレートが4を超えていれば良好、0~4の間であれば、大きな問題はないが、今後新規顧客獲得・アップグレードによる単価改善が必要、0以下は衰退しているということになります。
顧客の獲得、解約に関するKPIをまとめました。サブスクリプションモデルを用いるSaaSビジネスでは、継続して使ってもらうことが重要です。解約率の他にも満足度に関するKPIを持つことで、サービスの改善、新たなニーズの発見にもつながります。
顧客がサービスをどの程度勧めたいと思うかを測定する顧客満足度を表す指標。アンケート調査などを使用して、顧客が企業をどのように評価しているかを把握します。
サービスを利用している顧客が、どの程度サービスを継続して利用したいと思っているか顧客継続度を表す指標。顧客に1年後もサービスを継続利用したいと思うか質問し、1~5で評価してもらうなど、アンケート調査を行います。
ある期間内に解約した顧客数の割合、解約率。サブスクリプションモデルを採用しているSaaSビジネスでは、解約は収益に大きな影響を与えるため重要なKPIとなります。チャーンレートの平均値は3~10%で、理想は3%以下が目安とされています。しかし、サービスに依存するため自社で目標値を設定する必要があります。
チャーンレートには、収益ベースのレベニューチャーンレート(MRRチャーンレート)と顧客ベースカスタマーチャーンレートがあります。低価格のサービスであれば、顧客の解約の方が影響が大きいなど両方のチャーンレートを見なければなりません。
収益ベースで算出される解約率。その中でも、一定期間内に発生した解約やダウングレードによる損失金額をベースに算出するものを「グロスレベニューチャーンレート」、損失だけでなく、サービスのアップグレードやクロスセルの利益も含めて算出するものを「ネットレベニューチャーンレート」と呼びます。
顧客ベースで算出される解約率。「(ある期間内に解約した顧客数/期間前の顧客数)×100(%)」で計算します。
サービスのアップグレードやアドオンの購入など、既存顧客からの追加の売上。
契約終了やキャンセルなどによる、売上の減少。
一定期間内にどの程度契約を継続できたかを示す指標。顧客維持率。「((期間終了時の顧客数-期間中の獲得顧客数)/期間開始時の顧客数)×100(%)」で計算します。
一定期間内に既存顧客の売上がどれだけ増減したのかを示す指標、売上継続率。「(月初のMRR+アップグレードなどの追加購入の収益)-解約などによる損失/月初のMRR」で計算します。
ユーザーの動きに関するKPIをまとめました。ユーザーの利用状況を知ることで、新たなニーズや顧客のロイヤリティ把握に役立ちます。また、追加サービスや新たなマーケティング施策を行った際に、ユーザーエンゲージメントにどのような影響がでたのかを知り、施策の評価をすることができます。
1日あたりのアクティブユーザー数。日常的に使用してほしいのであれば、DAUをKPIに置くといいでしょう。「1日でサービスを利用したユーザー数/登録者数」で計算します。
1週間あたりのアクティブユーザー数。毎週更新するようなものは、WAUをKPIに置くといいでしょう。「1週間の間でサービスを利用したユーザー数/登録者数」で計算します。
1ヶ月あたりのアクティブユーザー数。長期間の利用を目指すのであれば、MAUをKPIに置くといいでしょう。「1ヶ月の間でサービスを利用したユーザー数/登録者数」で計算します。
スティッキネス(Stickiness)とは、粘着性という意味があり、ある期間内にどの程度頻繁に戻ってきてアクティブに利用しているか、つまりユーザーがどのぐらい熱中しているかを表す指標です。ユーザーのサービスの利用時間に対し、滞在時間を指標にする場合もあります。
R (Recency): 直近の利用状況、F (Frequency): 利用頻度、V (Monetary Value): 利用量の3つの指標の総称。これらの指標を組み合わせ、顧客のランク付けやマーケティング施策の検討などを行います。
企業の収益、経営戦略に関連するKPIをまとめました。サービスの収益から今後の成長や継続の検討、市場内でのサービスの立ち位置を理解し、サービス改善やマーケティング戦略の検討を行う際に必要となります。
既決月間定期収益のこと。契約により確約された月間収益額を示します。初期費用など1回限りの支払いなどを含まず、今後の解約・アップグレード・ダウングレードも考慮します。より正確な収入を予測するために重要な指標です。一般的に「MRR + 新規確定MRR – チャーンMRR – ダウングレード + アップグレード」で計算されます。
顧客が1年間に支払う金額の合計、年間契約金額。初期費用やオプション費用も含まれます。ACVは、顧客1人ずつに着目し、初期費用まで含まれるためARRより正確な収益となります。「月間利用料 × 契約期間(最大12ヶ月) + 初期費用やオプション料金など」で計算します。
顧客が契約期間内に支払う金額の合計。初期費用、オプション費用も含まれます。ACVは最大1年間の収益に対し、TCVは契約期間すべてで得られる収益となります。
売上高成長率+営業利益率の値が40%を超えるのが望ましいという、SaaS企業を評価する際の基準となる数値。Rule of 40を達成するためには、企業が収益性と成長性の両方をバランスよく維持する必要があります。例えば、営業利益がマイナスであっても売上成長率が大きくプラスであれば大きな心配がないと判断することができます。
会社が1ヶ月あたりにどの程度コストを消費しているかを示す指標。支出が収入を上回っている場合、この指標はマイナスの値になります。毎月使用した現金の合計額をグロスバーンレート、毎月使用した現金の合計額をネットバーンレートといいます。
事業者がターゲットとしている市場の全体的なユーザー規模を示します。TAMを把握することで、企業は、自社の製品やサービスが市場全体でどの程度需要があるかを理解し、市場シェアの拡大や収益成長の機会を見つけることができます。そのため、TAMは重要な指標です。
企業が直接的に提供可能な市場の規模を示します。SAMは、TAMよりも小さな数値であり、TAMは、市場全体の規模を示していますが、SAMは、企業が実際にアプローチできる市場の範囲を示しています。サービスに最も適した市場セグメントを特定し、より効果的にマーケティング活動を行うためにSAMを検討する必要があります。
企業が実際に販売可能な市場の範囲を示します。TAMやSAMよりもより現実的な売上目標となります。
SOMを決定するために、市場の需要、自社の強み、自社で可能な営業活動(プロモーション戦略、人員)などを検討します。
提供しているサービスが市場のニーズに合っているかどうかを示します。PMFを評価するために、市場調査、顧客フィードバック、顧客の継続利用率、顧客の紹介数、顧客満足度などの指標を使います。
顧客がサービスを導入して、その価値を実感するまでの時間を示す指標です。SaaSのような長期間利用してもらうことが重要なサブスクリプション型ビジネスでは、次の支払いタイミングまで継続してもらうためにも、TTVは短いのが理想です。顧客の解約率を最小限に留めるためにも、TTVに注意する必要があります。
営業やマーケティングにかかるコストに対して販売効率を測る指標のこと。企業がどれだけ効率的に成長しているか確認するのに使われます。「今四半期の経常収益 – 前四半期の経常収益) × 4 / 前四半期の営業マーケティングコスト」で求めることができます。
目安として、SaaS Magic Numberが0.75以上であれば営業・マーケティングへの投資を検討・実行、0.75以下であれば営業・マーケティングへの投資や戦略の改善が必要と言われています。
ARR(年間収益)を毎年Triple(3倍),Triple(3倍),Double(2倍),Double(2倍),Double(2倍)に成長させ、5年間で売上72倍を目指すというモデル。
使う場面によってニュアンスが異なる場合もあります。KPIを定めることで事業の計画が明確になるだけでなく、ユーザーニーズの把握などにも生かせます。SaaSは軌道に乗るまではコスト面での負荷が大きくなりがちなので、無駄を省きつついかに目標を達成していけるかがビジネスの成功の鍵になるでしょう。基本的な用語を整理しながら、チーム内での認識を合わせていきましょう。
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