SaaSとは?意味や特徴をわかりやすく解説!
近年、目にすることが増えた「SaaS」という言葉ですが、まだまだ認知や理解などが浸透していないように感じます。SaaSはその利用者だけでなく、現在別形態でサービスを提供している事業者にとっても注目度が高く、今後自社サービスをSaaS化するといったケースも増えてくるかと思います。この記事では、SaaSの意味や特徴など初歩的な内容を解説していきます。
SaaSとは
近年、目にすることが増えた「SaaS」ですが、まだまだ認知や理解などが浸透していないように感じます。
そもそも、SaaSとは、Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)の略であり、インターネットを介して提供されるソフトウェアの利用形態の一つです。自社内にソフトウェアを導入する必要がなく、インターネットに接続し、必要なソフトウェアを使用することができます。このようなビジネスモデルは、導入コストを抑えることができ、利用者にとって柔軟性があります。
SaaSはその利用者だけでなく、現在別形態でサービスを提供している事業者にとっても注目度が高く、今後自社サービスをSaaS化するといったケースも増えてくるかと思います。
読み方
SaaSは「サース」または「サーズ」と読みます。
一般的には「サース」と発音する場合が多いですが、「サーズ」でも間違いではありません。
意味・定義
先にも述べたように、SaaSはSoftware as a Serviceの略称です。直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」を意味します。
クラウドサーバー上のソフトウェアを、インターネットを経由して提供するサービスで、従来のパッケージソフトと異なり、パソコンにソフトウェアをインストールする必要はありません。SaaSにおいてはソフトウェアを利用する際に購入ではなく利用料を支払う形で費用が発生します。つまり「サービスとしてのソフトウェア」とは、ソフトウェアの価値を「もの」ではなく「サービス」の形で提供することを意味します。
一般的に、顧客は、月額固定料金または利用量に応じた従量課金の方法でサービスを利用します。SaaSを導入する目的には、業務プロセスの自動化、生産性の向上、コスト削減などがあげられます。
SaaSの歴史
クラウドサーバー上のソフトウェアをインターネット経由で利用するのがSaaSですが、どのような経緯で誕生したのか簡単に説明します。
まず、SaaSを利用するのに不可欠なインターネットの誕生が1960年代後半と言われています。そこから、数十年後、1990年代になってSaaSの先駆けであるASPが誕生しますが、機能的な制限や当時の技術的な課題もあり徐々に下火になっていきました。そんな中、1990年代後半になって、Webブラウザの一般的な利用が始まる頃にSaaSという在り方が見出され始めました。その他にも、インターネット接続環境の向上や技術進歩による操作性の向上などにより徐々に必要な要素が整備されていきました。
アメリカなどでは2000年代中盤頃からSaaSという言葉が広く使われ始めました。日本でも2000年代後半にかけてSaaSの注目度は上がっており、それから企業におけるDXの機運が高まるとともにSaaSへの関心も高まりました。2018年はSaaS元年と言われ、広く知られるようになりました。
当初は、メールやカレンダー、連絡先管理などのビジネスアプリケーションがSaaSとして提供されていましたが、現在では、財務会計、マーケティング、人材管理、eコマースなどの様々な業務領域でSaaSが利用されています。
SaaSの種類
SaaSにはバーティカルSaaSとホリゾンタルSaaSの二つの種類が存在します。
バーティカルSaaSは「業界特化型SaaS」と言われ、特定の業種や業界での利用を想定したものを指します。例えば、医療機関向けの電子カルテや、人事管理ソリューションなどがあります。
ホリゾンタルSaaSは「業務特化型SaaS」と言われ、例えば総務や経理などどの企業においても活用が見込まれる業務での利用を想定したものを指します。例えば、会計クラウドサービスや人事クラウドサービスなどがあります。
業界問わず使えるため、ホリゾンタルSaaSの方が市場規模は大きくなる傾向にあります。
SaaSの市場規模について
ここで市場規模の話が出てきましたが、SaaSがなぜ今注目されているのかは、市場規模の拡大の様相を見ると一目瞭然です。『富士キメラ総研「ソフトウェア新市場2020年版」2019年度実績』によると、日本ではSaaSの市場規模は年13%の勢いで急成長を遂げており、2019年の時点では約6000億円だったものが5年後の2024年には約1兆1200億円に到達する見込みです。
SaaS市場の拡大は日本のみならず、世界規模で伸びており、Fortune Business Insightsのレポートによると、2021年の世界市場規模は2,151億ドルと評価されています。2029年までには、8,833億4000万ドルに成長すると予測もされています。
急速に拡大するSaaS市場。日本だけでなく、世界の動きにも注目が必要です。
SaaSの代表例
テレワークが増えたこともSaaSの広がりを後押しした要因と言えるでしょう。テレワークをより効率的に実施するために、企業ではさまざまなSaaSの導入が進められています。
では、SaaSには具体的にどのようなものがあるのでしょうか?代表的なSaaSを紹介します。新しくSaaSを考えるときには、既にあるサービスも調査し、他社の強みがあるサービスを企画するようにしましょう。
①会計SaaS
会計ソフトは、売上や仕入れ、給与などの帳簿や請求書の発行などの業務をデジタル管理で経理業務の効率化や業務の見える化を目指すサービスです。経費精算や請求書の自動作成などの機能もあり、手作業での業務時間を削減することができます。家庭でも使える家計簿サービスもあります。開発の際には、法改正の対応も必須です。
②勤怠管理SaaS
勤怠管理サービスは、オンラインで社員の勤務時間を効率的に管理するサービスです。勤務時間や残業時間だけでなく、休暇や給与計算なども自動化され、経理業務の効率化に貢献しています。
③チャットSaaS
チャットツールは、社内や外部とのコミュニケーションを円滑に行うためのサービスです。チャットやビデオ通話、ファイル共有などの機能もついていることがほとんどです。テレワークやリモートワークの普及により利用者が増えました。複数の人とのコミュニケーションを簡単に行うことができるため、業務の効率化やコミュニケーションの改善に貢献しています。
④オンラインストレージSaaS
ストレージとは、データをインターネット上に保存するためのサービスです。ストレージは、複数人での共有ができるため、チーム内での情報共有やファイルの管理に利用されます。また、外出先でもスマートフォンやタブレットからアクセスすることができるため、業務の効率化やリモートワークにも対応できます。
⑤Web会議SaaS
Web会議SaaSとは、遠隔地にいる人たちとビデオ通話や音声通話で会議をするためのサービスです。Web会議SaaSSaaSは、場所や時間に関係なく参加できるため、リモートワークや海外とのビジネスでも活用されます。また、画面共有やチャット機能、ホワイトボード機能が備わっていることも多く、それらは業務の効率化に役立っています。
類似するクラウドサービスについて
そもそもクラウドサービスとはなんなのか?という方やSaaSと何が違うのか?と混乱している人もいるかもしれませんので、まずは簡単にクラウドサービスについて説明します。
クラウドサービスとは、インターネットを通じてストレージ、ネットワーク、サーバー、データベースなどのITサービスを利用する技術や仕組みを指します。所説ありますが、クラウドは顔の見えないインターネットの世界を雲の向こう側のサービスに例えたことから呼ばれるようになったとも言われています。
クラウドサービスとSaaSの違いは、サービス内容の範囲にあります。ソフトウェアを提供するSaaSと比べ、クラウドサービスはインターネットを通じて提供される全てのサービスと広義な範囲のサービスを意味しています。つまり、SaaSもクラウドサービスの一種と言えます。
前述の通り、SaaSをはじめとするクラウドを経由して提供されるサービスをクラウドサービスと言います。クラウドサービスには他にも、SaaSと共通する「◯aaS」を含む用語のPaaSとIaaSや機能面でSaaSと類似するASPなどがあります。それぞれSaaSと混同されやすい単語ですので、その3つについて簡単にご説明します。
PaaS
PaaSはPlatform as a Serviceの略で「パース」と読みます。
アプリケーションソフトが稼働するためプラットフォーム一式が提供されるサービスのことを指します。開発において、PaaSを利用した場合、用意するのはプログラムだけとなります。しかし、データベースの設定などをはじめとするプログラムの実行環境が制限されるので、自由度という点ではやや物足りない場合があります。インフラから開発する時間や労力を軽減したいけれども、ある程度柔軟にカスタマイズしたいという場合に有用です。
IaaS
IaaSはInfrastructure as a Serviceの略で「イアース」「アイアース」と読みます。IaaSはクラウド上のネットワークやサーバ(CPU・メモリ・ストレージ)などのコンピューティングリソースを提供するサービスです。リソース構成を自由に選択して利用することができ、その上に任意のアプリケーションを構築できます。IaaSを利用することで、ユーザーはインフラを所有する必要がなく、コストを抑えることができます。
SaaSやPaaSなどと違って自由度が高く、ハードウェアのスペックやOSを好きなように選べます。その分、セキュリティ対策についても考慮する必要があるなど時間や労力も多くかかることになります。
ASPとの違い
◯aaSの形ではありませんがSaaSとよく似た存在としてASPがあげられます。ASPはApplication Service Providerの略で、インターネット上で利用できるアプリケーションを提供する事業者を指す言葉ですが、サービス事態をASPと呼ぶこともあります。
サービスをインターネットを介して利用するという点ではSaaSとASPの根本的には同質のものと言えますが、ASPが発展した形としてSaaSがイメージされることもあります。ASPが生まれた当初は、安価で安定したインターネット回線が構築されていなかったことやセキュリティ面での課題が多く、なかなか普及には至りませんでした。その後、技術革新が進み、それらの問題が改善されたことで、SaaSという形に移行していきました。
SaaSとASPの大きな違いをあげるとするとSaaSはマルチテナントと言って、複数のユーザーが同じサーバーやアプリケーション、データベースといったシステムやサービスを共有して利用する方式です。対するASPはシングルテナントと言って、ユーザーごとに専用の環境を用意する形になります。
この管理の違いから、SaaSでは変更を複数のユーザーに同時に施すことが可能であり、変更や機能の追加などが容易で変更を加えながらサービスを提供していくことが可能で、対するASPはサービス開始の時点である程度完成形で提供されるという差異が生じました。
もちろん現在でもASPは存在しており、ユーザー数が少ない場合やマルチテナントでの環境の共有を忌避するケースでは有用です。SaaSかASPかという選択はあくまでも用途や規模感の違いによって判断されるに過ぎません。
SaaSビジネスのコツ
SaaSビジネスにおいて、独自のナレッジも必要です。より実践的な、SaaSビジネスのコツをまとめました。
①販売方法
SaaSのビジネスモデルは大勢の営業チームを作らず、インターネット上で契約終了まで完了することが一般的です。なので、営業マンに依存しない販売方法を考える必要があります。例として、一部サービスは無料で使える、トライアル期間を設けるなど、実際に利用してもらい契約を検討してもらう方法があります。
②継続的なアップデート
サービスを開始したら終わりではありません。継続して利用してもらうためにも、利用者の声に耳を傾け、定期的なアップデートが必要です。また、収益増加を見込むならオプション機能の開発も行った方が良いでしょう。
③カスタマーサポートの整備
サービスを開始したら、カスタマーサポートの体制を整えなければなりません。カスタマーサポートは利用者の不明点を解決するだけではなく、使い方がわからないことによる解約を防ぐためにも重要です。
また、丁寧なサポートは利用者の好感度をあげ、継続利用だけではなく、他者へのおすすめなど利用者数増加のきっかけにもつながります。
④セキュリティ対策の徹底
SaaSは、クラウド上で提供されるため、セキュリティ対策が非常に重要です。顧客データの漏洩や不正アクセスが発生した場合、信頼を失い、サービス提供を継続することが難しくなる可能性があります。セキュリティに対する取り組みを徹底し、適切な対策を行いましょう。
⑤コスト管理
SaaSを提供する場合、サービス提供・維持に必要なコストが多くかかることがあります。そのため、コスト管理を徹底し、収益性を確保することが重要です。開発前に、コストを見積もり、収益性の高いビジネスモデルを確立するようにしましょう
まとめ なぜ今SaaSなのか?
SaaSについて基本的な内容が分かったところで、最後になぜ今SaaSビジネスが拡大しつつあるのかを説明します。
まず第一にインターネット技術をはじめとするIT全般技術の発展があげられます。中でもクラウド技術の浸透や発展などにより手軽になったことは大きな要因の一つです。前述のASPにおける技術的な課題をSaaSという形でクリアできるようになったのです。
また、サブスクリプションという形態が普及したこともまたSaaSの急成長を後押ししていると言えます。これまでものを所有するという形が一般的であったのに対して、サービスを利用するという形が一般的にも浸透したことで、SaaSにおけるサブスクリプションというビジネスモデルが受け入れられ易くなったと言えます。ユーザーは必要な時に必要な分だけ利用することができるため、導入の手軽さ、コスト削減の面からもSaaSは求められるようになりました。
そして、ユーザーニーズの多様化という点もSaaSが注目される要因です。これまで、作って売ってで完結していたものが、ニーズの多様化によってそれだけでは顧客を十分に満足させることが難しくなってきました。SaaSはニーズに合わせてサービス内容を変えていける点で、従来のパッケージ製品よりも顧客の満足度を高めることが可能になりました。それだけでなく、サービスを提供する企業側もそれによって継続利用の利益や、ニーズにそぐわない製品を作って損失を生むと言ったリスクを回避できるため、その柔軟性とスピード感が顧客と提供事業者の双方にとって都合が良いのです。
昨今のリモートワークの普及などもSaaSビジネスへの追い風になっていることもあり、今後、あらゆるソフトウェアがSaaSとして提供されていくことが見込まれます。SaaSは顧客だけでなく提供事業者にとってもメリットが多いですが、まだまだ自社で1からSaaSを開発し、提供することは技術的、構造的な課題や困難が多いことも確かです。
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