SaaS開発ガイド【テナント編】

SaaS(Software as a Service)とクラウドコンピューティングは、現代のソフトウェア業界において切っても切り離せない関係にあります。特に日本のソフトウェア市場では、SaaSの採用が急速に進んでおり、単なるソフトウェアの提供方法を変えるだけでなく、企業のあり方そのものに大きな変革をもたらしています。
この記事では、SaaSとクラウドの深い関係性とそのビジネス上のメリット、そしてSaaSの成長を支える主要な概念について解説します。
クラウドベースのSaaS開発がもたらすビジネス上の具体的なメリットを、4つの観点からご紹介します。
オンプレミス型の場合、自社でサーバーを用意するため、たとえ利用率が低い時間帯でもコストが発生します。
これに対し、クラウドの場合は、大量のリソースを共有利用することで全体の利用効率を大幅に高めています。その結果、クラウドを利用する企業は、必要なときに必要な分だけリソースを利用することが可能になります。オンプレミス型と比べ、初期に必要となる設備投資も大幅に抑えられます。
クラウドを活用することで、必要なリソース(サーバー、ストレージなど)を瞬時に利用開始でき、インフラの準備を待たずにすぐに開発やテストに取り掛かることができます。
これにより、開発サイクル全体が大幅に短縮されます。新機能の追加や価格変更を迅速にデプロイできるため、企業は市場トレンドや顧客ニーズに素早く対応し、優位性を築くことができます。
クラウドベースのSaaSは、コストの項目でも述べたように、共有インフラストラクチャを利用することで、予測不可能なテナントの需要にも柔軟に対応し、リソースの効率的な利用を実現します。
SaaSのスケーリングに合わせて必要なリソースも増えていきますが、クラウドの活用により自動化し、人手を介さずリソースを増やすこともできます。
スケーラビリティの項目でも述べたように、スケーリングの責任をクラウドの提供するマネージドサービスに委ねることで、SaaSチームが機能開発に集中できるようになります。
特にクラウド上の概念として、「サーバーレス」という言葉があります。これは物理的なサーバーを意識せずともリソースを扱えることを表しており、AWS Lambdaなどに代表されます。サーバーレスのサービスを利用することで、需要に応じてコンピューティングリソースを自動でスケールアップ・ダウン可能になり、効率的な運用が期待できます。
これらの大きなビジネスメリットは、SaaS独自のアーキテクチャと、それを実現する具体的な仕組みによって支えられています。
SaaSのアーキテクチャは、以下の2つの要素に分けて考えることができます。
ユーザーが直接利用する、SaaSのコア機能を提供する構成要素です。テナントごとのデータ分離や、マルチテナント環境での効率的なリソース利用が求められます。
活用事例:クラウドのデータベースサービスを活用することで、テナントごとのセキュリティ要件を満たしつつ、データのバックアップ、リカバリ、監視といった煩雑な管理をクラウドに委ねることができます。これにより、SaaSの競争力を生み出すコア機能の開発にフォーカスすることができます。
テナントのオンボーディングや請求など、SaaS環境の基盤を管理する仕組みです。コア機能ではないものの、アプリケーションプレーンを支える重要な構成要素です。
活用事例:クラウドの認証サービスやAPIゲートウェイ、請求サービスといったマネージドサービスを組み合わせることで、新規テナントの受け入れ、利用状況の監視、料金の請求処理といった、管理基盤となる一連のプロセスを自動で、かつ安定して実行できます。
クラウドベースのSaaSは、クラウドコンピューティングの特性を最大限に活用することで、ビジネスに大きく貢献します。
従量課金制によりコストを最適化し、迅速なリソース確保で市場の変化に素早く対応できる俊敏性を実現します。また、需要に応じたスケーラビリティと、サーバーレスなどの技術による運用効率の向上は、開発者がコア機能に集中できる環境を提供します。
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SaaSに関する基礎的な知識を身に付けたい方はぜひご一読ください。
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