【導入事例】富士通Japan株式会社EDIソリューション事業部(10 Days SaaSification for AWS)
本日は富士通Japan株式会社EDIソリューション事業部におけるSaaS化のご支援として行った10 Days SaaSificationについて、事業部のシニアディレクターの大関様、ビジネス担当の蓮様、開発担当の牛込様にお話しを伺いました。
SaaS化は必然の流れだった
ーまずはEDIソリューション事業部での事業内容について教えてください。
大関さん:
EDIソリューション事業部はその名の通り、EDIサービスとその周辺サービスを取り扱っており、主に6つのプロダクトを手がけています。今回、10 Days SaaSification for AWSでSaaS化に取り組んだのは『EDILiNK』というEDIソリューションです。
ーEDiLINKについて簡単に教えてください。
蓮さん:
EDIは簡単に説明すると電子データをやり取りするものなのですが、EDiLINKの特長はWeb-EDIとファイルEDIを組み合わせて利用できる点ですね。プロダクトの特性上、特定の顧客層というよりも様々な業種・業界でご利用いただいています。あらゆる業種・業界でご利用いただけるので、多様なニーズや要望にお応えできるようにプロダクト作りを行っています。
具体的なご利用シーンとしては受発注業務や購買業務において、Webやファイルを使ったEDIの取引で使われることが多いですね。
ーSaaS化に至った経緯など教えてください
牛込さん:
まず、ここ数年でSaaSという言葉が広く浸透しつつあり、それに伴って世の中全体でSaaS化の機運が高まったように感じています。社内でもSaaSビジネスの推進という意識の高まりがあり、事業部全体でSaaS化に取り組もうとなった経緯があります。
蓮さん;
弊社は株式会社富士通マーケティングと富士通エフ・アイ・ピー株式会社の統合後、富士通株式会社のエンジニアが合流しているという発足時の背景があります。我々の事業部の母体となった組織が特にサービス化を推進していたということもあり、かなりの熱量がありました。そのため、社内でも特にSasS化への意識は高いのではないでしょうか。
大関さん:
元々EDIに携わっていた組織は30年ほど前からVANセンターというデータの預かりサービスに携わっていて、それが時代とともに、よりオープンなサービスへと移り変わっていきました。EDIはそういった流れを汲んでいるものなので、大きな歴史の流れの中でSaaS化というのは必然的なものなのではないかと考えています。
ー組織的な背景と歴史的な背景によるものが、昨今のSaaS化の潮流に後押しされたということですね。
ー10 Daysの活動の中で、特に顧客への価値提供の部分にフォーカスしている印象を受けましたが、何か特別な思いがあったのでしょうか?
大関さん:
EDIは他社との差別化が難しいと考えています。他社製品と比較して自社製品にどういった魅力や利点があるのかということを伝えていくことがとても難しいです。お客様が競合とEDiLINKを比較する際に、利点や将来性を評価していただくには、EDiLINK単独での価値提供には拘らず、社内の他のサービスとの連携での価値提供を行い、総合力で勝負していきたいと考えます。弊社は多様なプロダクトやサービスを取り扱っていますので、それらを組み合わせることで相乗効果をもたらすことができたら面白いなと考えています。
ーSaaSビジネスについてはどのようなイメージを抱いていましたか?
蓮さん:
直感的な話にはなりますが、サービスの構築やマーケティング、セールスなどの導入の壁を超えたら、マネタイズが容易という印象がありました。実態として違うことにはすぐに気がつきましたが…
ーSaaS化に際してSaaS有識者はいましたか?
牛込さん:
自部門にSaaSに精通した、有識者はいませんでした。そのため文字通り手探りの状態で始まりました。当時はSaaSという言葉を聞くようになり始めたくらいの時期で、社内でもSaaSを取り扱っておりませんでしたし、SaaSとASPとの違いもよくわからないような状態でSaaSに関する知識や経験の面が十分に備わっている状態ではありませんでした。
ーSaaS化を推し進める上で組織体制などについてのお考えは現時点でありますか?
蓮さん:
SaaS化を進めるにあたって、体制変更の必要性を強く感じています。
SaaS化を進める前から従来のインフラ基盤のあり方については議論をしていて、バラバラの基盤を統一する必要性は私も大関も感じていました。
それらを統一するためにはまず、事業部内の体制をクリアにする必要があります。
大関さん:
現在は製品ごとの縦割りで動くことが多いですが、今後は製品の枠に囚われることなく、事業部全体で横軸(ファンクション軸)でタスクを分担したり、能力やスキルに合わせた業務に事業部内でアサインしていくのがよいと考えています。そうすることで、基盤だけでなくこれまで製品ごとに独自に取り扱っていた部分をなくし、事業部内で足並みをより揃えられると考えています。
横軸として見た時に開発や運用のリーダーとして牛込を、セールスやビジネスのリーダーとして蓮をまずはAWS様とのPOCにアサインしました。
ーAWSについてはどのようなイメージをお持ちでしたか?
蓮さん:
機能やサービスが多いだけでなく、データセンターのキャパシティ、設備が良さそうな印象があったので、クラウド選定についてはAWSを利用するのが間違いないだろうと考えました。知名度もシェアも高く実績も多いので顧客からの心象も良いのではとも思いました。SLAが公開されていることも安心感に繋がると考えました。
自社で提供しているプロダクトが多いので、どうしても自社のプロダクトを使いたくなりますが、自社の強みとAWSの強みは異なりますし、視野を広く持って状況に合わせたサービス、プロダクトを使っていくことも大事で、価値を提供していくためには外部のサービスやプロダクトを上手く活用することも必要だなと考えています。
課題と現在地を理解する重要性
ー10 Days推進以前の様子や課題についてお聞かせください。
蓮さん:
現状、運用負荷が高いという課題を抱えていたので、AWSを活用し、運用や監視のレベルを向上させたいと考えていました。また、アーキテクチャの整理もしたいと考えていて、それに伴ってサービスレベルについても検討したいというタイミングで今回の10 Daysの機会をいただきました。
牛込さん:
最初はAWSにおけるアプリケーションのデプロイの組み込みや費用対効果を検討したいという考えでした。アプリケーションの作り方やインフラアーキテクチャなどによる運用の複雑化という課題を効率化して、スケールさせていくためにAWSを活用してどのような改善策があるのかを模索したいという背景がありました。
ー10 Days実施を検討する上で懸念などはありましたか?
蓮さん:
当初は10 Days全てに参加するのは難しいのではと率直に思いました。10日間に渡ってこのプロジェクトに参加するために、普段の業務から離れられるのか?というこちら側のリソースの懸念ですね。実際には10日間通して実施するという形ではなく、10人日のタスクを無理なくこなせるスケジュールで調整し、進めることができたので安心しました。他の業務との折り合いもつけやすく、スムーズに進められたと思います。
コンテンツとして印象的だったのは「AWS SaaS Journey Framework」(※AWSの提供するSaaS ソリューションの最適化のためのガイダンス)の振り返りです。振り返りによって、自分たちが今現在いる位置を再確認できましたし、それによってやるべきことを考えさせられました。網羅的な見直しと共通認識を取るために非常に効果的な時間だったと思います。
時期的にはインボイス対応などもあり、業務調整が大変な時期もありましたが、お手伝いいただいたおかげで、想像していたよりもかなりスムーズに進んだと思います。
牛込さん:
10 Daysという名称の通り10日で本当に終わるのか?というのは私も最初に思いました。SaaS化への道のりが曖昧だったこともありますし、業務負荷的なところも懸念でした。
やってみた感想としては、10 DaysのコンテンツはSaaS化へのプロセスが体系化されていたので、必要なことや考えるべきことを順序立てて整理しながら進めることができました。自分たちの気づきや考え方の整理がしやすかった印象です。
10 Days推進効果
ー今後目指すべき方向性や課題や具体的な方法などがクリアになりましたか?
牛込さん:
今回のプロジェクトではSaaS化を進めていくために考えるべき観点を知識として得られたと考えています。運用に関しては自動化が必要な意識はありましたが、具体的に何をするのか、どうするのかというところは漠然としていました。実際に自動化して動くのを見せていただいたことで効果を実感し、その重要性についてしっかりと理解できました。
10 Daysに挑戦したことで課題が明らかになり、その課題を解決することによる効果が明確になりました。AWSの知識が少なかった中で、10 Daysを通じてAWSのサービスの具体的な機能などが分かり、とても参考になりました。
ー10 Daysを通して社内で何か変化したことはありますか?
牛込さん:
将来的に、既存環境をAWSに移行することで中長期的にコストメリットを享受できる可能性が見えたので、AWSの利用推進への動機がさらに明確になって、より動きやすくなったように感じます。
ー他にAWSのメリットは見つかりましたか?
蓮さん:
やはり信頼性は大きなメリットだと感じましたし、自動拡張などによって拡張性が担保される点や監視などの機能も豊富で、必要な機能、部品が揃っているという印象です。標準で欲しい機能が備わっているので、別のサービスを契約して導入などの必要が少なく、その点でもスケールメリットを感じました。
もちろん、移行時や慣れるまでは大変だと思いますが、そこを乗り越えたらコスト面での大きな改善が期待できます。
ーSaaSus Platformのメリットはどのように感じましたか?
牛込さん:
認証認可の統一ができるというところはEDiLINKだけでなく他のソリューションにも活用できるのではないかと感じました。多要素認証があらかじめ使えるというのも、かなり手間がかかる部分ではあるのでそこが簡略化されるのは大きなメリットだと思います。
料金請求のところに関しては全自動化が理想ですが、社内で調整が必要な部分ではあるので、近々でメリットを享受できるかは分かりませんが、ID課金やデータ量の監視による課金フローが実現できれば請求フローの簡素化に繋がるのではないでしょうか。
サービス連携することで、開発しなくてもビジネスの選択肢を増やせるというのは、開発コスト面だけでなく、品質面でもメリットがあると考えています。今後は、より深い知見や高いスキルを持つ専門サービスを活用するという選択も積極的にしていきたいと考えています。
SaaSは契約が増えていくにつれて煩雑化するので、そういった局面に対して人力で望むのではなく、統合管理して自動化していく必要を強く感じました。なるべく人が関与するところを減らして、統合と自動化を行わないとSaaSビジネスは回らないと感じています。
SaaSを契機に組織の改革を
ー事業の今後の展望について教えてください。
牛込さん:
まずは、動き始めているEDiLINKを着実に進めていくことが第一かなと思います。そのためにもAWSに強い人材の確保などに動き始めています。AWSをはじめとする有用な外部サービスを活用しながら運用とアーキテクチャの効率化を図っていきたいと考えています。
組織改革に伴って私自身もEDiLINK以外のソリューションに参画したり、動き方が変わっていくのではないでしょうか。
大関さん:
EDiLINK以外のソリューションもあるので、将来的には効率化のために基盤を共通化してAWSへの集約を検討しています。それを見据えて、体制構築やリソースの確保など組織の改革を進めています。
ー最後に10 Days推進検討者に何か一言いただけますでしょうか
大関さん:
まず、10 Daysという言葉が衝撃的で興味を持ちました。プロダクトやサービスを広めていく上でインパクトやイメージというのは我々も大切にしているところなのでそういった点でとても気合いが入ったプロジェクトなのだなと感じました。我々のソリューションは社内で完結することが多い中でAWSという新しいサービスを利用していくことはチャレンジでもありましたが、10 Daysを通じて様々なことを教えていただき、外部サービスへと目を向けることの重要性に気づくきっかけにもなりました。
牛込さん:
10 Days SaaSificationをやって良かった1番のポイントはプロジェクトを通じて考え方やマインドを整理し、変えることができる点です。
SaaS化推進のために、SaaS化のために必要なことは何なのか、漠然としていたことがクリアになりました。SaaS移行時の観点だけでなく、運用やSaaSとしてのあり方、コストやビジネス、アーキテクチャなど様々な観点での考え方が身につくだけでなく、自分たちの状況を理解することで、より効率的に進めることができるという気づきに繋がったと感じています。
ー本日はありがとうございました!
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