【導入事例】『セールススイート』グロービング株式会社
ベータ版開発でSaaSus Platformを利用し、速やかなプロダクト検証を実現!
戦略コンサルティングファームとして、質の高いコンサルティングサービスを提供しているグロービング株式会社。新しいサービスとしてコンサルティングのなかで得た様々なナレッジのクラウドプロダクト化に取り組んでいます。
今回はクラウドプロダクトのベータ版としてSaaSus Platformを利用した背景や所感についてお話しいただきました。
インタビューにご協力いただいたのは上級Manager/CTOの上田慶祐さんです
コンサルティングの高度なナレッジをプロダクトへ
ーまずはじめに、貴社の事業と上田さんの業務内容について教えてください
上田さん:
グロービングは経営コンサルティングを主軸事業として行っています。代表を始め、大手の総合コンサルティングファーム出身のメンバーを中心に事業を行っています。コンサルティングチームは現在、150人ほどが在籍しています。他にも経営者向けにEAS(エグゼクティブアドバイザリサービス)と呼んでいる、企業の役員クラスを実際に務めた人間の経験や知識を元に行うグレイヘアコンサルティングも行っております。
それらと並行してクラウドプロダクトの開発を事業として行っており、私はその事業内で上級Manager/CTOとして、エンジニアリングを主導しています。
ーありがとうございます。貴社のクラウド事業について教えてください。
上田さん:
まずは、弊社の『オクタゴン』と称するクラウドプロダクト群のコンセプトについてご説明させていただければと思います。
オクタゴンは我々がコンサルティングを行っていく中で、業務の中で共通化されている部分をSaaS化するというコンセプトになります。コンサル業務の中で再利用可能な要素をプロダクトとして提供することで、コストの削減や工数の削減を行い、人間がより価値を生むことができる領域に注力できるようになることを目標にしています。コンサルのインダストリアライズとして、コンサル経験者の経験やナレッジをサービスに落とし込むことで価値を提供していけたらと考えています。
特に大手のコンサルティング報酬は大企業でないと手が出せない金額であることも多く、中小企業にとっては縁遠い存在になってしまっているかと思います。SaaSとして提供することで、中小企業にもグローバルファームのナレッジを比較的安価に提供することができれば、国内の企業の力を底上げすることに繋がるのではないでしょうか。
ークラウドプロダクトの構想はいつ頃からあったのでしょうか?
上田さん:
構想自体は設立当初からありましたが、実際に立ち上がり始めたのは2023年ごろからですね。その前から少しずつ構想を練ってはいました。私自身もプロダクトを作るタイミングでコンサルとエンジニア両方の知見を生かしてプロダクトの企画などを行うポジションでジョインしましたが、エンジニアチームの体制変更に伴ってテックリードを務めるようになりました。
ーありがとうございます。現在は、SaaSus Platformをどのようなプロダクトで利用しているのでしょうか?
上田さん:
現在は『セールススイート』というプロダクトの開発にSaaSus Platformを利用しています。
セールススイートはコンサルティングの中でも営業分野に特化したプロダクトです。
元々、大手事業会社をキャリアに持つメンバーがPMとしてジョインしたという背景があります。経験と実績に基づいたノウハウをサービス化するという観点で考えると、主軸になるメンバーが明るい領域から着手するのが良いと考えました。プロダクトによって提供する価値に対して、既に経験と実績を積んだメンバーがいることで、事業検証がある程度進んだ時点から構想を開始できるというメリットもありました。
セールススイートでは「営業の生産性を劇的に向上させる」というのが大きな目標です。
例えば、顧客の属性を新規と既存で分けた時に、新規の営業の方がハードルが高いというのは想像に難くないと思います。新規顧客をいきなり増やすことは困難なので、そうではなく既存の営業先からの成果をいかにして最大化していくか、ということを考えていく必要があります。つまりはLTVの最大化ですね。既存営業先と一口に言っても、当然それぞれ状況が異なります。相性や質の面でもそうですし、それに加えて時期的な良し悪しなども存在するので、様々な要因を考慮した上で、今現在どこに注力すべきかという分析を行う必要があります。その時に営業をかけるべきところがわかれば、闇雲に営業をかける必要はなくなり無駄が抑えられますよね。時間がかかる新規を開拓するよりも、既存の営業先をしっかり抑えることで、確実に売上を伸ばしていくということをまずは実現したいです。
ーサービス化に伴う課題はありましたか?
上田さん:
セールススイートに関しては大きく2つの課題がありました。
1つはデータアベイラビリティに関する課題です。会社によって手に入る情報、持っている情報の種類にばらつきがあるというのが、プロダクトとして画一的なフローを用いる際に壁になりました。例えば、ネットプロモータースコアのような、我々が従前よりコンサルティングを行う際に用いていたデータを必ずしも全ての企業が保持しているわけではありません。そのようなデータと相関し代替しうるデータは何かを考え、またそれに合わせて分析も変える必要がありました。
2つ目が、元々大手事業会社で活用していたノウハウなので、別の業種や業態でもその知識と経験を活用できるのか、合う業態は何なのかの見極めが必要という点です。特定の企業、業種、業態のみでしか利用できないとなるとビジネスとしてスケールしないので、人材紹介で培ったノウハウをいかにして横展開できるのかというのを検証していく必要があります。
現在、人材紹介以外の業態の企業で実際に利用してもらい、検証を進めている段階です。
少人数体制、経験者不足が開発の課題
ー実際に開発を見据える中でどのような活動をしていましたか?
上田さん:
最初にソリューション選定を行う必要があったので、AWS Summit Tokyoに参加してみました。0から立ち上げることになるので、内製のエンジニアが少ないことや新規領域への大規模な投資は難しいという組織的な背景に対して、少数のエンジニアでどのようにして開発と運用を行っていくかというのが課題でした。
SaaS開発の一部に携わったことのあるメンバーはいましたが、SaaS全体の開発に携わった経験のあるメンバーはいませんでした。ビジネスサイドでSaaSに携わったメンバーはいましたが、テックサイドでは十分な経験があるメンバーがいない状況でした。
当初は認証画面やユーザーデータベースは自社で開発していましたが、とりあえず正常系を作っておいて異常系に関しては後回しにしてしまっていました。最初のうちはエンジニアしか使わないので、テナントセットアップやユーザー追加をCLIベースにしていましたが、PMサイドが見るための画面などの必要性も感じ始めている段階で、SaaSus Platformを利用することで、その辺りの手間が省けるのではと感じました。
ー実際に利用してみていかがでしたか?
認証やユーザー管理の開発の手間は明確に減っていると感じています。導入以前の工数について細かく把握はしていなかったので、実際に導入前後での比較はできていませんが、ログイン周りの画面や機能をしっかり作るとなると、1人月は最低でもかかると思いますし、ユーザー管理の部分に関してもそれなりの時間とコストがかかると思われるので、そこの工数や運用負荷を低減できたというのは実感としてありますね。
現状、検証のフェーズということもあり利用企業が少ないので請求機能に関してはまだ使用していませんが、今後、顧客数が増えていったら請求機能も使いたいと考えてます。SaaSはユーザー数に応じた課金が一般的かと思いますが、セールススイートは売上を上げることが主たる価値提供なので、プライシングも売上の増加に応じた分を料金とする形や売上上昇見込みのパーセンテージに応じた課金なども面白いかなと考えています。
ドメインナレッジを持った開発組織へ
ーありがとうございます。オクタゴンの今後について教えてください。
上田さん:
オクタゴンに関しては、スタートはセールスから入りましたが、将来的にはマネジメント領域のプロダクトを中心にした展開を考えています。経営ボードのようなイメージで企業の予実や売上やコストを分解してダッシュボード化し、会社全体の管理を行い、それを通じて可視化された課題に対して、オクタゴン内のプロダクトを活用して解決策を提示していく、ある種コンパウンド的な事業を考えています。
オクタゴンの構想にはこれまで、実務に携わってきたメンバーの経験と実績という強みがあります。ソリューションが提供する価値が課題を解決できるであろうという点については検証が既に済んでいる状態です。そのソリューションをプロダクト化した時に、変化する部分がどの程度価値提供に影響するのかの検証で済むので、検証に要する時間やコストが少ない点は他のプロダクトと異なる点かもしれません。検証が手軽なので、それに開発が追いつかないということを避けるためにもソフトウェアのアジリティも重要だと感じています。
プロフェッショナルのナレッジという最大の武器をプロダクトに落とし込むために、エンジニア組織についても、業務領域ごとのプロフェッショナルのドメインナレッジを浸透させていくことが重要になると考えています。単に開発のみを行うエンジニアではなく、プロダクトの扱う領域のナレッジを持ったエンジニアが開発を行うという形が理想かなと思います。プロダクトと開発メンバーが紐づいていて、ドメインナレッジを持ったメンバーで組織化を行うことは、我々の持つ武器を最大限に生かしつつ、ソフトウェアのアジリティの担保にも繋がると考えています。
私個人としては、今後複数のプロダクトがオクタゴンの中で誕生していくことが想定されるので、それらの全体像を把握しながら1つの統一されたコンセプトとしての整合性を保つポジションとしてテックサイドをリードしていくことになると考えています。
ーSaaSus Platformの今後について期待することはありますか?
上田さん:
機能面で言えばユーザーのアクティビティを可視化するような機能が実装されると嬉しいですね。ユーザーの動きが把握できればCSの高度化にも繋がりますので。
あとは、オクタゴンは複数のサービス群で成り立っていく想定なので、プロダクトを横断したIDやテナント、料金プランなどの管理ができると良いですね。そうなると、プロダクトのマイクロサービス化への対応がしやすくなるので、複数のプロダクトを扱う企業には刺さるのではないでしょうか?
ー最後にSaaSus Platformの導入を検討している方に向けてメッセージをいただけますでしょうか?
上田さん:
SaaSus Platformはエンジニア不足の会社にとって、開発立ち上げ時のショートカットには最適です。
ーありがとうございました!
E-Book「SaaS開発ガイド」にてSaaS開発に取り組む前に知っておきたい重要ポイントを解説しています。
SaaSに関する基礎的な知識を身に付けたい方はぜひご一読ください。
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