SaaSにおけるプライシング(価格設定)の考え方について
SaaSのビジネスモデルにおいては、料金プランの設計や請求方法を確立させることは非常に重要な視点となります。ビジネス毎に、適切な料金プランは異なります。例えば、全てのユーザに、定額利用料を毎月請求することもあれば、利用量に応じて利用料も変わる従量課金を選択しているサービスもあるでしょう。
これらは、ビジネスのフェーズや提供する業務の種類や顧客ターゲットなど、さまざまな要素を考慮して自社のサービスに適した設定をする必要があります。
パッケージング(料金プラン作成)
どんな料金プランを提供するかをまず決定する必要があります。サービスリリース初期は、一つの料金プランで提供することもありますが、ビジネスのフェーズが進むと幅広い顧客のニーズに対応する必要が出てきます。その場合には、複数の料金プランを提供することになります。
SaaSは、基本的には共通の機能をサービス提供していくモデルとなるため、そもそも、誰に向けて価値を提供するのかを明確にする必要があります。ターゲットが誰なのかの解像度を上げるために、ペルソナを定義する方法があります。
ペルソナを定義する際に、例えば、スタートアップ企業のCEOをターゲットにしたサービスを提供したいとなった場合には、そのペルソナに対してどんな価値を提供するかを明確にし、その対価としてどんな料金プランを作成するかを考える必要があります。
また、最初はスタートアップ企業に提供していたサービスも、プロダクトの成長と共に、エンタープライズ企業向けにニーズにも応えられることがわかってくることがあります。その場合に、例えばエンタープライズ企業の部長というペルソナに対して、同一の価値を同一の料金で提供するケースもあれば、エンタープライズ企業に向けて別の価値を別の料金で提供する場合も出てきます。
このように、別々の価値を提供する場合には、複数の料金プランを準備して、プランによって、提供する機能を明確し、価格設定も別々に検討していく必要があります。
SaaSでは柔軟な料金プランの設定により、適切にビジネスを成長させていくことができます。
価格設定
次に、上記で設定したプランに価格を設定していく必要があります。ここでは、価格設定のポイントとして3つをあげてみます。
- プロダクト開発に要したコストから料金を設計する
- 競合プロダクトをベースに料金を設計する
- プロダクトが提供する価値から料金を設計する
プロダクト開発に要したコスト、サービス運用に必要なコストから料金を設計する
まず、プロダクト開発に伴い発生したコストを基に、料金を設計する方法です。この料金設計方法は製造業や小売業に多くみられます。コストをベースに料金を設計するメリットとしては、シンプルさと予測のしやすさが挙げられます。
ただし、料金設計の柔軟性に課題があるため、SaaSプロダクトには必ずしも適しているわけではありません。SaaS開発では開発要員の増減などコストが変動する要素が多い一方、料金はサブスクリプションのような定額であることが多いため、場合によっては利益を確保できないリスクが生じます。
競合プロダクトをベースに料金を設計する
競合他社のプロダクト料金を参考に料金を設計する方法もあります。新規参入時などで市場の費用相場に精通していない場合、競合他社のWebサイトなどを調査することで料金の目安を掴めます。簡単かつスピーディに料金設計を行える点がメリットです。
しかし、競合他社と類似した料金設計となるため、料金面で差別化を図るのが難しい点がデメリットといえるでしょう。
プロダクトが提供する価値から料金を設計する
プロダクトの価値をベースに料金を設計する方法もあります。自社のプロダクトの価値を精緻に計ることは容易ではないため、料金設計に複雑性を伴うことが懸念点ですが、多くのSaaS企業が価値に基づいた料金プランを採用しています。
価値ベースの価格設定では、自社のSaaSプロダクトのコストや機能、サービスなどの観点から顧客に与える価値を考慮し検討します。
そして、自社のSaaSプロダクトに十分な価値を乗せることができれば、競合他社と比べて競争力のある料金設計が可能です。また、継続的な機能アップデートやサービス改善に伴い、料金を段階的に上げていくこともできるでしょう。
開発にかかったコストや、競合他社のプロダクトの価格設定なども考慮することで、適切な価値ベースの設定が可能となります。
まとめ
料金体系については価値ベースで料金の大枠を作り、コストや競合の視点から見て微調整をしていくなど、1つ基準となる設定方法を定めた上で、他の二つの方法の視点を取り入れることもできるでしょう。価値ベースに依存しすぎて、コストとの兼ね合いが上手くいかなくなったり、競合の取り組みと大きく乖離して顧客がついてこないなどの状況も考慮しつつ、適正な価格設定を行うことが重要になります。
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